江森盛夫(演劇評論家)の「演劇袋」より
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「SCRAP」(作:シライケイタ(劇団温泉ドラゴン)、演出:日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)、プロデューサー:流山児祥)、Space早稲田。
「平成29年度時代の文化を創造する新進芸術家育成事業」の公演である。
役者でも出演しているシライケイタの”ごあいさつ”から”
「ここらの人間はみんな済州島出身やで」 この作品を書くための取材中、かってアパッチ部落と呼ばれた場所にある店でビールを飲みながら、常連客の一人から聞いた言葉です。この言葉からすべてが始まりました。東京に戻り資料にあたり、初めて「済州島4・3事件」のことを知りました。国による、済州島民に対する大虐殺から、命がけで大阪に逃れてきた彼らの存在を知り、アパッチ族に対するイメージがグルリと変わりました。「居場所を探している人たちの物語」として書く覚悟を決めた瞬間です。この一点で、現在を生きている我々と彼らは繋がることができると思ったのです。(後略)」
この兵器工場の跡に残ったSCRAP(鉄屑)を拾って暮らしを立てていた済州島民の居住の場所が舞台だ。狭い劇場の中央にその場所を設定し、客は三方から舞台を観る。12人の登場人物がこの狭い空間で存分に演じることができた、舞台美術の佐々木文美、演出の日澤はシライの意図を十分に活かし、役者群はシライを含め、そのころの済州島出身の悲喜こもごもの在日朝鮮人を演じきっていた。
韓国とのかかわりの芝居を最近書いてきたシライの一つの到達点だろう。
「いっちの舞台大好き」より
かつて済州島出身者が集まっていた大阪の『アパッチ集落』そして『済州島4・3事件』・・・今回の『SCRAP』の作者・シライケイタさん(温泉ドラゴン)は実際にこれらを色々と取材をしたのだそうです。
知らないことを知る・・・知らなかったことへの衝撃、知った事実の大きさへの衝撃・・・それらは全て「なかったことにはできない」紛れもない真実なわけで。
シライさんはココ最近流山児★事務所『代代孫孫2016』(脚色・演出)をはじめとした韓国をモチーフにした作品を多く手がけていて、それが私には不思議だった・・・なぜ韓国をモチーフにした作品を作り続けているのか。
今回の『SCRAP』を観て、その理由がなんとなく分かった・・・気がした。
ご本人に直接きいたわけじゃないので、なんとなく・・・なんだけど。
『知りたいから』
これは『SCRAP』のあるシーンである人が言うセリフでもあるんだけど(←ネタバレ回避のため遠回しな言い方ですみません 汗)、知らないことほど悲しくて怖いものはない・・・だからこそ知りたいし知らなきゃいけない・・・舞台の登場人物のセリフを借りて、シライさんの気持ちが代弁されてるのかな・・・なんてことをふっと思ったりしました。
余談ですがシライさんは私より1つ年下・・・同世代でこんなこと考えてるなんてすごいなぁ・・・。
そして今回は佐原由美さん(流山児★事務所)がある事情から言葉を発することが出来ない少女を演じて新境地を開拓!
難しい役どころをとても素敵に演じています。
月船さららさん(metro)と清水直子さん(俳優座)の2人のシーンには涙腺が切れそうになって、正直ヤバかった(^_^;)。
俳優陣は安定の素晴らしさですが、やはり今回も女優陣がそれ以上に素晴らしかったです♪
日澤雄介さん(劇団チョコレートケーキ)の演出も独特の間を使って登場人物それぞれの思いや感情を浮き彫りにしていて、『新・殺人狂時代』の時よりもさらに日澤色が出てたかなと思いました。
今回客席がほぼ円形なため、いつものSpace早稲田での臨場感以上に臨場感が半端ない!!
そして空腹で観劇に来たらもれなくお腹が空きます(笑)。
『SCRAP』の世界観、臨場感、リアル感・・・その全てがSpace早稲田にあるのです。
公演は17日までSpace早稲田にて!