「代代孫孫2016」流山児★事務所@ザ スズナリを観た。
作:パク・グニョン 朴根亨(劇団コルモッキル)
脚色・演出: シライケイタ(温泉ドラゴン)
企画:流山児祥
ずっと想像力を掻き立てられながら、「ザ・スズナリ」ならぬ「ザ・ミミナリ」で過ごした1時間40分。
韓国が日本で日本が韓国になっちまってるパラレルワールド。
もしもそうだったらの平行世界。
以下、思いのままに記す。
北緯38度線はまさにフクシマを境いに引かれ、その世界ならおそらく僕は、日々脱北を企んでいるかもしれない。
ベトナム戦争に日本が集団的自衛権を行使し、派兵している。
そして、日本に588(オーパルパル)がある。つまりかつての在韓米軍に対する慰安所の名残りでもある飾り窓のことだろう。それがなんとフクシマの双葉町にあるというのだ。まあ、このあたりからは単なる日本と韓国の立場を入れ替えただけとは言えない事情が見えて来る。
おそらくは、オリジナルが第2次大戦まで日本の被害者であった韓国が、ベトナム戦争では加害者としての立場をも経験してしまったという流れが描かれているからに違いない。時が経ち、人の記憶から都合の悪いことは消えていき、また同じことを繰り返すそれが人の世だ。だからこそこの戯曲が韓国で生まれたのだと、劇中大いに頷く。そして流山児祥とシライケイタが興味を持ったことにもだ。
韓国と日本が慰安婦問題を解決できていないと同時に、韓国とベトナムとの間にも同様の問題がある。そしてそれにはアメリカも絡む。
588が存在する場所がフクシマとなることで、戦後の復興を朝鮮戦争と国内の貧困に対して原発政策を展開した日本の姿が重なる。その背後にはアメリカの影が大きく覆いかぶさる。そこには全てを経済優先とする人間の事情がある。朝鮮戦争で経済成長を加速させた日本、朝鮮戦争での恩を返すという大義の元に何十万人もベトナム派兵した韓国、もはやだれが被害でだれが加害なのかすらわからなくなる人間の事情。
それでもやはり懸命に愚直に生きるニンゲンを描き切ることで、希望の光が射す。
ベトナムでこの戯曲を翻案し上演したらまた面白いかもしれない。
昨年の「あれからのラッキー☆アイランド」、アメリカ人がやってくれないかな、なんてことも思った。
人はやはりその立場に置かれないと実感など持ち得ない。それをカバーするには想像力を磨いていくしかない。そしてそれにうってつけのツールは演劇だ。
演劇の可能性にワクワクした1時間40分。
たったこれだけの時間で世界を飛び回れた気分になれるお得感満載の舞台だった。