演劇定点◎カメラ:まねきねこ
「風琴工房:詩森ろば書き下ろし新作、ロングラン公演。
舞台。ボックスを組み合わせてテーブルと椅子、部屋平床など種々見立て。
目まぐるしく転換。転換もショーの一部と見せて楽しいところ。
お話。沖縄本土返還の顛末を、政治の舞台裏と沖縄裏社会の変遷から描く。
縛られし人々を縛りのないダイナミックでカラフルな舞台で描く。抗いと煩悶をノンストップの社会派エンタメとして活写。
歴史を数値や文書でなく、個々人の生き様、息づかいから蘇らせてて好感。楽天と痛みの交錯には堪らない気持ちになるねこ。オヤジもニイチャン、ネエチャン、みなかっこよくて魅力的。
鉄砲玉・日島亨役、五島三四郎さん。こんな人居たっけ(失礼)な鮮やかさで印象。」
梶野聡
「沖縄返還が果たされた1972年を基軸にした沖縄裏社会での団結と抗争、そして首相官邸での日米交渉の本音と妥協が目まぐるしいスピードで繰り返し描かれていく。しかし、沖縄裏社会での激しい争いや裏切り、そして差別や貧困にさえ「人間性」があるのに対して、米国とnegotiationを繰り返す狭い官邸のふたりには強い「暴力性」を感じた。(たぶん作者の意図とは解離しているだろうが…)
そう感じさせた要因は、いまの沖縄で、殊更に高江で起きている人々に対する「官製の暴力」の凄まじさにある。裏社会には人情があり、信頼があり、道理があり、だからこそ裏切りがある。クニとクニとの間にはそもそも人の顔がない。あるのは紙切れ一枚である。
高江に内地の機動隊が動員されているのはその人の顔を消すための方略なのだろう。しかし、この「暴力性」はすでに沖縄だけの問題ではない。この作品からはそんな警鐘が聞こえてきた。」