公演情報

シアターRAKU 2025
480303114_2997870687029174_1297456429650136510_n.jpg

 

原作:W・シェイクスピア
台本:山元清多
演出/流山児祥
音楽/高橋牧(時々自動)
振付/北村真実(mami dance space)



 ご予約はこちら

2025/05/05 (月)〜17 (土)

@Space早稲田

 


■予約はお早めに



■◇■◇■◇■◇■◇■◇


==DVD発売中==


こちらから


『冥王星の使者』



457330426_2835929113223333_8909520598022832971_n.jpg

 

 

 

**********

 

 

作⦿高取英
(月蝕歌劇団)

脚本・演出協力⦿天野天街
(少年王者舘)

演出⦿流山児祥

音楽⦿巻上公一
(ヒカシュー)

人形製作⦿山田俊彦
(人形劇団ココン/ITOプロジェクト)
 

 

流山児★事務所
2023年度 新人募集
劇団で活動することに興味がある人を募集します。

【募集人員】
6名 (俳優・スタッフ・制作)
18歳以上35歳未満。
国籍不問。心身ともに健康な男女

【第一次審査:書類選考】
以下を流山児★事務所まで郵送してください。
(1)履歴書(連絡のつく電話番号とメールアドレスを記載のこと)
(2)写真1点(バストアップ)
(3)作文「流山児★事務所に入団してやりたいこと」(400字程度)


【第二次審査:実技・面接】
書類選考通過者のみ、連絡いたします。
※実技審査料3,000円は当日持参のこと。
※スタッフ・制作は面接のみ(無料)です。

【入団後の活動】
流山児★事務所の活動に準じていただきます。
優秀な新人は劇団公演、海外公演などに参加できます。

【お問合せ・応募先】
流山児★事務所 新人募集係
〒162-0045 東京都新宿区馬場下町60番地 まんしょん早稲田307
TEL:03-5272-1785(平日13時〜17時)
E-MAIL:mail@ryuzanji.com

情報詳細
CD/DVDを買う
OKCD.jpg


続々オールド・バンチ〜カルメン戦場に帰る〜 DVD
「オールド・バンチ〜復讐のヒットパレード!〜」「続々オールド・バンチ〜カルメン戦場に帰る〜」DVD発売中!
その他公演パンフレットなど
 ≫詳しくはこちら

男気、生き様、これがテラヤマ歌舞伎だ!
        いっちの舞台大好き BY いっち

無頼漢と書いてならずものと読む…文字通りパワー溢れる“漢“な舞台でした。
権力vs庶民…なんか今の時代にも通じるような。
今回は男優陣の躍動が素晴らしく、男気とか生き様が如実に現れていて
…長丁場の殺陣もすごくかっこよかった!!
その分女優陣がちょっと割を食ってしまった感もなきにしもあらずだったかなf^_^;)。
しかしそんな中でもオーディションで選ばれた花魁・三千歳役の田川可奈美さん、立ち振る舞いが素晴らしかった!スペシャルゲストの高野豊島区長も美味しいところを全部かっさらっていき(笑)…すごくいい味出してました!


そしてなにより今回私が個人的にうれしかったのは、流山児★事務所のトップスター3人(塩野谷正幸さん・若杉宏二さん・伊藤弘子さん)が同じ舞台に揃い踏みしたこと!

塩野谷さんも若杉さんも独特の雰囲気というか独特の色気があって、出てくるだけでその場の空気が一瞬で引き締まってましたが…特に若杉さんは【プラモラル】以来で舞台を拝見しましたけど、なんか昔よりも若返ってる気がするのは気のせいでしょうか(笑)?※若杉さんはアラフィフです。ちなみに塩野谷さんは還暦。

ホント出てくるだけでかっこいい若杉さんが登場するたびに「キャ〜(≧∇≦)!若様〜!と心の中で叫んでいた私だったのでした(笑)。若杉さん、映像や商業演劇もいいですが、流山児★事務所の舞台も忘れずにまた出てくださいね!

弘子さんもいつもと変わらぬ安定感で舞台を引き締めていて…この3人を同じ舞台で観れたことが、長年流山児★事務所を見続けている私には大変うれしかったです(^^)!今回は諸般の事情により1回しか観れなくてめっちゃ残念!!でも観れてよかった!
2013-11-30 09:42 この記事だけ表示
いつものうさぎライターさんの「劇評」です。      CORICH 舞台芸術

江戸後期、老中水野忠邦の過激な改革のせいで庶民の暮らしは窮屈になる一方だ。
歌舞伎は取り締まられ、花火も禁止、女どもは商売が出来なくなった。
遊び人の直次郎(五島三四郎)は、世の中を変える芝居がしたいと役者を志願する男。
美しい花魁の三千歳(田川可奈美)と恋に落ち、悪徳商人森田屋に身受けされそうな三千歳を守ろうとする。
三千歳は生き別れた母を探しており、人斬りになった兄を憂いていた。

一方、権力者水野(塩野谷正幸)の近くにいながら、体制に批判的で“不良”オヤジの茶坊主河内山宗俊(山本亨)は松江出雲守の妾にされそうな上州屋の一人娘を五百両で取り戻す事を請け合う。

お上に抗う歌舞伎者たちは河内山と共に出雲守の屋敷へ乗り込み、上州屋の娘と、やはり餌食にされようとしている三千歳を救うため死闘を繰り広げる。
そしてついに江戸の町に火が放たれ、禁じられていた五尺玉の花火が上がる。河内山は二人を救い出せるのか、三千歳の母親は、直次郎の恋の行方は…?
・・・・・・・・・・
久しぶりに“暮れの12時間時代劇”を観たような気分。
時代劇の楽しさ満載でわくわくした。強請集り(ゆすりたかり)で名を馳せた河内山宗俊の台詞もケレン味たっぷりで心地よく悪い奴ながら庶民の味方をする男は山本亨さんにぴったり。
対する水野忠邦の端正なたたずまいは正統派時代劇風だ。
塩野谷さんの権力の頂点に君臨する侍ぶりが素晴らしい。
普通に脚立を担いで出てきた時は「電球でも取り換えるのか」と思ったがするする登ると仁王立ちで演説、侍の所作も美しく、鍛えられた動きにほれぼれした。

直次郎役の五島三四郎さん、直情型の遊び人を粋な江戸っ子らしく演じとても良かった。谷宗和さん、水野の不正を暴こうと一座に紛れて機会を狙う元武士の役で「花札伝綺」に続いて拝見したが、とても“無頼”の似合う役者さんだと思う。

現代の問題を論理的に追及しつつエンタメに展開するというのが中津留さんのスタイルだと思うが今回は逆だ。エンタメの中に社会問題を巧みに織り込んだ感じ。芝居がかった河内山の台詞など歌舞伎ベースでありながら台詞が柔軟で随所に現代的な笑いもあった。

時代劇ファンとしては、リアルでない歌舞伎っぽいチャンバラも様式やお約束も、猥雑さも楽しかった。
それに何と言ってもあのエネルギー、体制に反発し束縛を憎む精神が息づいている。
オープニングを野外で行うという、いわば「河原でやっていた頃の芝居」の
再現を宣言するような始まり方も、原点へのオマージュを感じさせる。

あー、やっぱり悪漢が魅力的だと面白い。
2013-11-29 12:06 この記事だけ表示
女優の有希久美さんの「劇評」実に的確。

テラヤマ歌舞伎 『無頼漢』 観てきました!
脚本 中津留 章仁  良し
音楽 上妻 宏光   良し
演出 流山児 祥   良し
殺陣 栗原 直樹  良し
...
役者からは 一丸となっての心底からのエネルギーを感じ、それだけで グッとくる!

直次郎が 「自由になりたい!」 という台詞を言った時、思わず 心の中で 「今の日本 意見を発表するのもままならなくなる。」強行に採決した法案・・・ 国民の多数が反対しているのに!怒りと情けなさに 胸がどくどくした・・・

塩野谷正幸さん(水野越前守) 山本 亨さん(河内山 宗俊) ベテラン勢が 身体をはって 演っていた! 亨さんは 負傷しているにも係わらず 10分以上の(?) 殺陣は見事なスピード感!! さすが !!

伊藤弘子ちゃん(お市)の 「目がみえなくなって 仕事もできない 世話もできない、だから娘を手離したんだ」 その娘が 花魁になり あやうく 森田屋清蔵(栗原 茂)に 見請けされそうに! しかし 森田屋は なんと その娘の 実の父親だった〜〜〜  ええっ そんなことって ・・・・・・。涙が頬をつたって 仕方なかった。。。。

合唱あり  群舞あり  若い人は すご〜く ジャンプしていたなぁ〜!90cmの高さに 両足ジャンプで上がったり、高等テクニックを 難なくこなしていた !!

よく笑い 泣き、 テラヤマ歌舞伎に魅せられた 2時間20分。たくさん 問題提起もしてくれた。
2013-11-28 23:13 この記事だけ表示
エンタメの中に社会問題を巧みに織り込む見事な平成歌舞伎!             
  BY「月町1丁目1番地」

池袋豊島公会堂「みらい座いけぶくろ」で流山児★事務所の「テラヤマ☆歌舞伎 無頼漢―ならずものー」を観る。

社会派の中津留章仁さんが寺山修司の原作をどんな歌舞伎に書くのか期待していたが“庶民のうっぷん晴らし”という歌舞伎本来の表現に時代を反映させて見事な「平成の歌舞伎」になっていた。

社会の底辺で生きる者に権力者の理想など机上の空論、お江戸が炎上すれば政権交代、というのは江戸時代か、平成の世か?!

江戸後期、老中水野忠邦の過激な改革のせいで庶民の暮らしは窮屈になる一方だ。歌舞伎は取り締まられ、花火も禁止、女どもは商売が出来なくなった。遊び人の直次郎(五島三四郎)は、世の中を変える芝居がしたいと役者を志願する男。美しい花魁の三千歳(田川可奈美)と恋に落ち、悪徳商人森田屋に身受けされそうな三千歳を守ろうとする。三千歳は生き別れた母を探しており、人斬りになった兄を憂いていた。

一方、権力者水野(塩野谷正幸)の近くにいながら、体制に批判的で“不良”オヤジの茶坊主河内山宗俊(山本亨)は松江出雲守の妾にされそうな上州屋の一人娘を五百両で取り戻す事を請け合う。

お上に抗う歌舞伎者たちは河内山と共に出雲守の屋敷へ乗り込み、上州屋の娘と、やはり餌食にされようとしている三千歳を救うため死闘を繰り広げる。

そしてついに江戸の町に火が放たれ、禁じられていた五尺玉の花火が上がる。河内山は二人を救い出せるのか、三千歳の母親は、直次郎の恋の行方は…?

久しぶりに“暮れの12時間時代劇”を観たような気分。時代劇の楽しさ満載でわくわくした。
強請集り(ゆすりたかり)で名を馳せた河内山宗俊の台詞もケレン味たっぷりで心地よく悪い奴ながら庶民の味方をする男は山本亨さんにぴったり。

対する水野忠邦の端正なたたずまいは正統派時代劇風だ。塩野谷さんの権力の頂点に君臨する侍ぶりが素晴らしい。するする登ると仁王立ちで演説、侍の所作も美しく、鍛えられた動きにほれぼれした。

直次郎役の五島三四郎さん、直情型の遊び人を粋な江戸っ子らしく演じてとても良かった。谷宗和さん、水野の不正を暴こうと一座に紛れて機会を狙う元武士の役で「花札伝綺」に続いて拝見したが、とても“無頼”の似合う役者さんだと思う。

現代の問題を論理的に追及しつつエンタメに展開するというのが中津留さんのスタイルだと思っていたが今回は逆だ。

エンタメの中に社会問題を巧みに織り込んだ感じ。芝居がかった河内山の台詞など歌舞伎ベースでありながら台詞が柔軟で随所に現代的な笑いもあった。

上妻宏光さんの三味線がもっと冴えるかと思ったが、歌声に埋もれてしまった感じ。公演中1度でもライブで演奏したら、すごい音だろうと思うとちょっと残念。

時代劇ファンとしては、リアルでない歌舞伎っぽいチャンバラも様式やお約束も、猥雑さも楽しかった。

それに何と言ってもあのエネルギー、体制に反発し束縛を憎む精神が息づいている。オープニングを野外で行うという、いわば「河原でやっていた頃の芝居」の再現を宣言するような始まり方も、原点へのオマージュを感じさせる。

この底辺の人間の怒りとパワー、最近調子こいてるどこぞの腹イタぼんぼん宰相に見せつけてやりたいと思ったぜ。
2013-11-28 10:09 この記事だけ表示
信頼しているプロデューサー・演出家の小澤俊夫氏の「劇評」が出ました。

演劇の力で世直しを!                             
                                小澤俊夫(プロデューサー・演出家)

「特定秘密保護法案」が衆議院を通過した昨日(11月26日)、池袋の豊島公会堂で流山児事務所公演「テラヤマ☆歌舞伎 無頼漢(ならずもの)」(原作・寺山修司、脚本・中津留章仁、音楽・上妻宏光、演出・流山児祥)を観た。

昨年の「地球☆空洞説」同様、芝居は中池袋公園で始まった。

江戸の町衆が集まり、「水野憎ス」(アベノミクスの捩りだろう)の筵旗を掲げ、幕政に対して不満を述べている。そこに追手がやってきて、逃げ惑う町衆たちに交じって観客たちも公会堂へと向かった。

時は天保年間。全国的な凶作により米の値段や物価が高騰し、百姓一揆や打ち壊しが各地で多発していた。そんな折、将軍コ川家慶は幕政改革の上意を伝え、老中・水野忠邦は幕府各所に綱紀粛清と奢侈禁止を命じた。改革は江戸町奉行・遠山景元により江戸市内にも布告され、芝居小屋の江戸郊外への移転、寄席の閉鎖など、庶民の娯楽に制限を加え、歌舞伎役者の7代目市川団十郎などが江戸から追放された。

水野忠邦(塩野谷正幸)の圧政に、江戸庶民の不満は爆発寸前。役者を目指す遊び人の直次郎(五島三四郎)は、美しい花魁の三千歳(田川可奈美)を知る。直次郎と母親・おくま(三ツ矢雄二)の住む長屋は、スリやかっぱらい、めくらの集団・鵙市(外波山文明)、お市(伊藤弘子)、笛市(今村洋一)、葛市(イワヲ)等、魑魅魍魎が住む犯罪長屋。1年ぶりに帰ってきた丑松(甲津拓平)だが、女房子供は姿を消していた。芝居小屋の前で「水野体制批判」をして役人に追われた三文小僧(谷宗和)は茶坊主・河内山宗俊(山本亨)に救われる。

直次郎は花魁の三千歳(田川可奈美)と恋に堕ちるが、三千歳を直次郎と張り合う森田屋(栗原茂)は、御家人くずれの金子市之丞(若杉宏二)に直次郎殺しを依頼する。

母親・おくまの猛反対を受けた直次郎は、おくまを簀巻きにして大川に放り込む。森田屋に手籠めにされ、松江出羽守(上田和弘)に賄賂として差し出された三千歳だが、屋敷を脱出して大川に身を投じようとする。その時おくまが流れ着き、彼女を助け出す。

河内山宗俊は、上州屋(木下藤二郎)の一人娘・浪路(滝香織)が出羽守に妾になれと屋敷に軟禁されていることを知り、500両で浪路を取り戻す事を請け負う。河内山の命を掛けた大仕事を知り、直次郎も仲間に加わった。

松江家では相変わらず出羽守が浪路を追い回していたが、家老の北村大膳(後藤英樹)はこのご乱行が外に漏れるのを恐れ、浪路と近習頭・宮崎数馬(木暮拓矢)が不義の仲だとでっち上げた。そこへ河内山宗俊扮する御使僧が現われ、大芝居を打つ。

出雲守から浪路を奪い返したまでは良かったが、家老の大膳に見破られ、繰り広げられる壮絶な戦い。

チャンチャンバラバラ、見事な殺陣に息をのむ。死闘の果て、河内山は壮絶な最後を遂げる。終盤、お市と森田屋の間に出来た子が三千歳であり、眼が見えないので子育ても出来ず、やむなく娘を手放した事を知る。

直次郎は邪魔者おくまを今度は山に捨てようと家を出たが、夜空に大輪の花が咲くのを見た。それは黒船来襲を告げる大砲の音だった。

衆議院で「特定秘密保護法案」が強行採決された翌日の今日、「NSC法」が成立。国家の統制が強化され、狂人・安倍晋三が目論む戦争への軍靴の足音が、ますます近付いてきた。「特定秘密保護法」は、今日から参議院で審議入りし、12月6日に成立する予定。

国民の「知る権利」を抹殺し、国民主権を根底から覆す平成版治安維持法。この世紀の悪法を断固阻止しなければ、我々は再び戦争への道を歩むこととなり、それはまた国家にとっても存亡の危機を迎える。

劇中、老中・水野忠邦は「一揆なんかで権力は倒せない、ただ交代するだけだ」と述べたが、権力を交代させるための一揆が、今こそ求められている。

「特定秘密保護法案」に口だけで反対するだけでなく、今こそ一人一人が謀反の狼煙を挙げ、実力行使でこの悪法と狂人・安倍晋三に立ち向かっていこう!

日本が戦争の口火を切った12月8日、この法案に反対する人たちはそれぞれの場で全国一斉ストライキを起こし、職場放棄、公演の中止、交通機関の全面ストなど、「実力行使」でこの悪法を廃案に持ち込みましょう!

猥雑で、所狭しと駆け巡る役者たちのパワーに圧倒され、それぞれが持ち場を見せる劇作術に感心し、今に警鐘を鳴らすその内容に胸が熱くなる。演劇の力で世直しを!
2013-11-27 21:47 この記事だけ表示
こんな「劇評」も。


「終りのない祭りのはじまり」  BY KIKIのお気楽観劇記録


さてさて、当日配布用のパンフレットからキャスト名を転記してみたのだけれど、誤字脱字、間違い不足等がないか、なんとも自信がない。何しろ総勢50人近い人数だ。その人数が舞台中を走り回るのだと、それを思うだけですでにテンションが上がる。

この芝居のタイトルは、無頼漢と書いて、「ならずもの」と読ませる。そしてその前に、テラヤマ歌舞伎と冠がついている。寺山修司原作とあるのは、彼が篠田正浩監督と組んで創った映画『無頼漢』のシナリオを元に、中津留章仁氏が新たに脚本を書き下ろした、ということらしい。
その映画も、河竹黙阿弥の歌舞伎「天衣紛上野初花」を原作にしているので、二重三重に物語が重ねられ、ある種の神話めいた普遍性を確保している。
……などと書いてはみたものの、実はそういう理屈っぽい言い回しの似合わない芝居だ。

池袋駅から徒歩5分ほど、豊島区役所のすぐ裏手にある豊島区公会堂が会場となっているが、舞台が始まるのは、その公会堂の前にある中池袋公園。東京の街中で、晩秋の澄んだ陽射しを受けながら、お面売りの男が少年に死神の面を渡したり、派手ななりをした役者連が何ごとかを叫んだり。役者連が掲げたプラカードには「水野憎す(みずのにくす)」という文字。やや苦しいが、今年の流行語大賞候補にもなっている「アベノミクス」のもじりだろう。取り囲む見物衆(我々観客ね)を書き分けて、捕り手が役者たちを追い、公園の公衆トイレの上では目の不自由な按摩一家が何ごとかを叫び、我々は、そういう人々の物語に取り込まれたまま、会場に入り、指定された席に座ることになる。

そんなふうに始まったため、会場の中も公共ホールというより、妖しげな芝居小屋めいた雰囲気に感じられる。天保の改革により、芝居や花火や賭博など庶民の娯楽が規制され、江戸の町では、老中 水野忠邦への批判が強まっていた。そういう世相を背景に、役者を目指す若者 直次郎と、花魁 三千歳の恋路、水野忠邦を失脚させようとする、役者連のもくろみ、松江出雲守に軟禁された商家の娘 波路を助けるよう頼まれた河内山宗俊など、多くの登場人物が行き交う群像劇だ。

人情噺や仇討ち話、恋のもつれなどが重なり合って、やがてさまざまな因縁がひとつにまとまり、世をはみ出した無頼の輩が手を組み、天下の老中水野忠邦へ反旗を翻す。水野の過去の醜聞を瓦版にして撒き、町に火をつけ、禁じられている花火を挙げてやる、という。

それぞれの物語がクライマックスに向かって集約されていく、その様子が観ていてとても気持ちいい。
河内山宗俊役の山本亨さんは、江戸城に出入りの茶坊主ながら、無頼な雰囲気と色気がある。終盤の長い決め台詞は、思わず大向こうから声をかけたくなるようなカタルシスを感じさせられた。

憎まれ役であるはずの水野忠邦を演じた塩野谷正幸さんの眼力と、彼には彼なりの義があってやっているのだという説得力が物語に厚みを加えた。彼が言う、「一揆なんかで権力は倒せない。ただ交代するだけだ」という言葉が印象に残る。

直次郎の母おくまを演じる三ツ矢雄二さんの怪演は、母が息子へ向ける執着を、じんわりとしかしややコミカルに見せてインパクトがあった。

猥雑で泥臭くてエネルギッシュな舞台。その要所要所を締める様式美。そしてそこに込められた反骨精神。
歌ったり踊ったり恋をしたり、あるいは天下国家を語ったり、壮絶な斬り合いを見せたり、盛りだくさんでパワフルな、そしてとてもゼイタクな芝居だ。

数年前に、花園神社の境内で『椿版 天保十二年のシェイクスピア』を観たときの「お芝居って、なんて面白いんだろう」という感慨を、この『無頼漢』を観た後も感じた。

「終わりのない祭りの始まりだ」と河内山宗俊が声を上げる。無頼漢たちが勢ぞろいして順に名乗りを上げると、観ていてゾクゾクしてくる。
こういう芝居が好きなんだ、と思う。
2013-11-27 09:54 この記事だけ表示
遂に出た。巧いなあ、言葉使いの名手の「劇評」である。

演劇評論家:朝日新聞の今村修氏の「劇評」

民の気持ちの分からぬご政道、金が敵の世の中を、意地と機転でひっくり返す――。

昨夜は豊島区テラヤマプロジェクト第2弾 テラヤマ歌舞伎「無頼漢 ならずもの」(原作=寺山修司、脚本=中津留章仁、音楽=上妻宏光、演出=流山児祥)@豊島公会堂。50人近い出演者が舞台を、客席通路を所狭しと全力で駆け抜ける。池袋の闇の中からまつろわぬ魑魅魍魎たちが立ち現れ、うたかたの叛乱の祭りを繰り広げた。

原作は、歌舞伎の「天衣紛上野初花」(講談では「天保六花撰」)を下敷きにした、篠田正浩監督の映画「無頼漢(ぶらいかん)」の脚本。水野忠邦による天保の改革、相次ぐ風俗取り締まりで息を詰まらせた、直次郎(五島三四郎)、河内山宗俊(山本亨)、金子市之丞(若杉宏二)、暗闇の丑松(甲津拓平)ら、稀代の歌舞伎者たちが大江戸の空に解放の花火を打ち上げる。権力に対して想像力で立ち向かう寺山らしいピカレスクロマンだ。

流山児は2006年にも佃典彦脚色で「無頼漢」を舞台化・演出している(流山児★事務所「BU・RAI・KAN」)。この時の舞台は、しょせん徒花で終わった直次郎らの叛乱に、自己満足で終わっていった全共闘運動に対するポスト全共闘世代=佃の批判を読み取り、全共闘世代の流山児があえてそんな舞台を作ったことに感心した。関心はそっちにあった。

だが、時は流れて7年後。今回の上演では、主人公らの企みに対するシンパシー、切実さが格段に増した。このとんでもない政治状況の下、表現者として黙っては居られない。原作にもある劇中の「今が地獄」というセリフが強烈なリアリティーで耳に残る。バカ騒ぎ大いに結構。後先考えずに、状況に風穴を開けたい。花火を上げたい。走りたい。そんな切羽詰まった思いを、体で代弁してくれる、ステキにふざけた奴らがここには居た。我妻宏光の三味線がその熱を煽った。
心意気に激しく共感した。

家にあった「寺山修司シナリオ集」(映人社)に「無頼漢」が収められていたので、比べて読んでみた。

劇画的な社会派作品に定評のある中津留の脚色は、芝居者を前面に出し、表現と権力との対決の構図を鮮明にする。さらに、水野を追い詰めるスキャンダルや、権力と歌舞伎ものたちの間をつなぐ遠山(さとうこうじ)を登場させ、森田屋(栗原茂)を徹底した悪人に仕立てて、「経済」の代弁者とするなど、ストーリーの現代的なリアリティーを補強する。だが、時にそれが説明的に見えて、大江戸の空に炸裂する幻視の花火へとなだれ込んでいくはずのドラマのダイナミズムが滞る場面があるのが残念だ。

「特定秘密保護法案」は怒号の中衆院特別委を通過した。外交も、原発政策も、沖縄の基地問題も、国民の思いを公然と無視する政治がまかり通っている。

この池袋の熱気を今度こそ一発の徒花にせず、想像力を権力に向ける武器とするにはどうしたらいいのか、しかし、そんなことは可能なのか。風邪が抜けず、ポストパフォーマンストークを失礼した帰り道、そんな思いが頭の中をぐるぐる回り続けた。(敬称略) (11月27日)
2013-11-27 00:33 この記事だけ表示
これも素敵な劇評です。「観劇ブログ〜拝啓、ステージの神様〜」 BY KURI

拝啓、ステージの神様。
江戸町民への憧れ?を体感できました。

『テラヤマ★歌舞伎 無頼漢(ならずもの)』テラヤマ(寺山)で、歌舞伎である。
どちらも私はてんでわかっちゃあいない。けれど、舞台を観ながら、「あの時代のあの町に生きてみたかったなぁ」なんて思うことはよくあることで、江戸時代の江戸の町は、度々そう思いを馳せることがある。

『テラヤマ★歌舞伎 無頼漢(ならずもの)』は、天保十三年のお話で、舞台は江戸の町。
原作・寺山修司、脚本・中津留章仁、音楽・上妻宏光、演出・流山児祥。

観客が江戸町民になるところからこの舞台はスタートする。役名で言ったら「その他の江戸町民」というところだろうか。中池袋公園で、彼らを輪の外から距離を取って見る。
「おいおい、なんかはじまったぞ!」
「またいつものお騒がせのあいつらだろ」ぐらいの感じで。
ほどなくして、会場の豊島公会堂(みらい座いけぶくろ)に案内される。
途中、信号が変わるのを待って横断歩道をしっかりわたったりしながら・・・・・・。
会場に入るとそこは芝居小屋。どうせなら桟敷に座りたい気分だった。そして、物語のつづきが始まる。

役者を目指す遊び人直次郎と花魁 三千歳との恋、直次郎と母親おくまとの関係、会いたいと願う三千歳の母は?江戸の政治は、江戸の芝居は、江戸の町民の暮らしは・・・・・・。
40名以上のキャストが、舞台の上、客席の間を駆け巡る、駆け巡る。どうせなら、その他の江戸町民たる私たちも、駆け巡りたかったほど。
どうせなら、もっと笑って、もっと泣いて、もっと歌って、もっと騒ぎたかった。でも、そこを敢えてその他の江戸町民らは取り残すようにしているのだとしたら、
そりゃあ、しょうがないか。
芝居のはじまりを告げ、チャンバラのリズムをあおる役目の拍子木のいい音が、冬の空によく響いた。
おっと、冬の空だって。ここは小屋の中だった。
「おいおい、なんか騒がしかったな!」
「あいつらいつもそうなんだって!」

江戸町民気分のまま、芝居小屋を跡にした。
2013-11-26 14:21 この記事だけ表示
次々と絶賛の「劇評」が。ありがたいことである。
ぜひ、多くの皆さんに見てもらいたいものである。全ステージまだ「余裕アリ」です、ふらりと豊島公会堂まで!!


優れて現在的な舞台!                江森盛夫(演劇評論家) 「演劇袋」


「無頼漢 ならずもの」
(原作:寺山修司、脚本:中津留章仁、音楽:上妻宏光、演出:流山児祥)
 −豊島区テラヤマプロジェクト第2弾寺山修司没30年記念認定事業。
大元は河竹黙阿弥の歌舞伎台本、それを映画化した寺山のシナリオを中津留章仁が舞台台本にした。第一弾「地球☆空洞説」と同じく公会堂前の中池袋公園で始まる・・。

水野忠邦の庶民の暮らしと文化を弾圧した天保の改革に抵抗する民衆を山本亨が演じる河内山宗俊、直次郎らの無頼漢を先頭にして戦い抜く・・。

波乱万丈、勧善懲悪、外道の醜悪、てんこ盛りの物語を上妻の音楽にのって流山児が50人近い男女入り乱れる役者群を率いて、舞台、劇場全体を使って展開する・・。

水野の悪政は、今の安倍の悪政を撃つインパクトを持った、優れて現在的な舞台だ・・。29日には豊島区高野之夫が客演する。(11月26日)

Show Ryuzanji
あと、こんな感想も。

これでもか、これでもかの立ち回りを楽しませてくれた豊島区テラヤマ・プロジェクト「テラヤマ歌舞伎 無頼漢」(11月21日〜12月1日)

(村井健:演劇評論家のブログ「村井健が行く」11月25日)
2013-11-26 12:15 この記事だけ表示
ALLABOUT 注目!の ミュージカル
執筆者:松島 まり乃

6月の舞台『アトミック☆ストーム』で、原発をミュージカルで真正面から取り上げた流山児 ☆事務所の新作。今回は歌舞伎『天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)』をもとに寺山修司が70年の映画『無頼漢』のために書いた脚本を、さらに新進劇作家の中津留章仁がアレンジ。三味線プレーヤーの上妻宏光が、音楽を担当します。

『天衣〜』の舞台である幕末の不穏な空気、寺山が脚本を書いた当時の学生運動の残り香、そして再び「抑圧の時代」を迎えつつある“今”……。そのすべてを内包する、ダイナミックな“不服従の人間ドラマ”が期待できそうです。

で、「劇評」です。
築61年のレトロな会場、豊島公会堂には提灯や幟が並び、ちょっとしたタイムスリップ気分。決して座り心地がいいとは言えず、舞台も通常の劇場より高く、首が疲れる……なんていうことは、ドラマに引き込まれるうち、どうでもよくなってきます。

大筋は歌舞伎版と同じで、悪事が露見した河内山の台詞では、演じる山本亨さんが歌舞伎とはまた違った「名調子」を聞かせます。その一方では、「権力」を代表する水野忠邦に、政治を行う側の「正義」を語らせ、民衆の「道理」と対立させている点に“今”ならではの説得力が。

また、寺山修司の作品にしばしば登場する「母子」「仲間外れ」モチーフが本作にも挿入され、独特の郷愁とアクの強さを添えます。上妻さんによる歌は数曲ながら、耳なじみがよく、今後ぜひ本格的ミュージカルを手掛けて欲しいところ。

抵抗の物語と言うとたいてい民衆が打ちのめされて終わりますが、今回は「芝居」というメディアに僅かな希望が残される結末。

片岡直次郎役の五島三四郎さんを始め、出演者たちも溌剌として、熱いものがこみ上げてくる舞台です。
2013-11-26 01:15 この記事だけ表示