公演情報

座・高円寺 冬の劇場25
流山児★事務所 公演
『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』

作/清水邦夫 
演出/西沢栄治 
芸術監督/流山児祥

2019年
2月1日(金)〜10日(日)
会場:座・高円寺1

1982年初演、清水邦夫のまぼろしの名作が今よみがえる!


 

*************

 

 

流山児★事務所
2018年度 新人募集
劇団で活動することに興味がある人を募集します。

【募集人員】
6名 (俳優・スタッフ・制作)
18歳以上35歳未満。
国籍不問。心身ともに健康な男女

【第一次審査:書類選考】
以下を流山児★事務所まで郵送してください。
(1)履歴書(連絡のつく電話番号とメールアドレスを記載のこと)
(2)写真1点(バストアップ)
(3)作文「流山児★事務所に入団してやりたいこと」(400字程度)


【第二次審査:実技・面接】
書類選考通過者のみ、連絡いたします。
※実技審査料3,000円は当日持参のこと。
※スタッフ・制作は面接のみ(無料)です。

【入団後の活動】
流山児★事務所の活動に準じていただきます。
優秀な新人は劇団公演、海外公演などに参加できます。

【入団後の費用】
(1)入団金:50,000円
(2)研修費+稽古場維持費:月額10,000円(月納)
※入団1年後には稽古場維持費:月額5,000円のみとなります。

【お問合せ・応募先】
流山児★事務所 新人募集係
〒162-0045 東京都新宿区馬場下町60番地 まんしょん早稲田307
TEL:03-5272-1785(平日13時〜17時)
E-MAIL:mail@ryuzanji.com

情報詳細
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日本劇団協議会主催・新進演劇人公演『腰巻お仙〜振袖火事の巻〜』(唐十郎:作、小林七緒:演出、流山児祥:プロデューサー)本日:12月16日(日)お昼の回で全15ステージ満員御礼で無事終演です。

50年前の唐十郎初期の名作を「役者・スタッフ一丸となって自分達の「今の物語」にすることに勝利した舞台」(渡辺修)、とりあえずの序章です。

来年は第二弾『少女都市からの呼び声』を予定しています。
早稲田の小空間に鮮烈に生まれ変わる「わたしたちの今」のものがたり。ご期待ください。

『腰巻お仙』本当に多くのみなさんのご来場とご支持に出演者・スタッフ一同厚く御礼申し上げます。

流山児★事務所次回公演は2019年2月1日(金)〜10日(日)全12ステージ

清水邦夫の名作『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』を西沢栄治の演出で上演します。

座・高円寺で新春にお会いしましょう。

撮影:横田敦史


画像に含まれている可能性があるもの:1人、立ってる
2018-12-16 13:42 この記事だけ表示   |  コメント 0

これもステキな「劇評」です。BY渡辺修(俳優)


久し振りに斎藤美奈子さんの「日本の同時代小説』を読んでいる。イヤー快刀乱麻。バッサバッサに切りまくる。「浮雲」は『へたれインテリ』の戯言扱い。(そう書いていたかは定かではないが)純文学も同じようにへたれインテリの自意識過剰なオナニー扱い(と誤読したかもしれない)。それに対抗してのプロレタリア文学。さも労働者のリアリティーの優越制をバックにして文学しているようだが所詮はインテリの自己証明とにべもない。この本は「純文学論争」以降の『同時代小説』の話がメインなのだが未だそこまで読み進めていない。

そんなことを連想しながら観てしまったのが、昨日の流山児★事務所『腰巻お仙〜 振袖火事の巻〜』なのだが、アングラ演劇があの時僕たちの共感を得たのは既成新劇の教条主義的説教臭さだったし、そんな時に現れたやさぐれ無頼派演劇人達によって起こされた一斉蜂起的パラダイムチェンジだった。と、これまた僕の一人合点かもしれないが、地方の無知な痴呆高校生にはそう思えた。

「振袖火事」は「明暦の大火」で江戸の街造りの大転換になった大火事で江戸城天守閣も燃え、それ以降再建はされなかったし、新吉原への移転もこの時に行われた。


唐さんが「振袖火事篇」としたのは花園神社を追い出されて新宿という街を、イメージの大火で焼き尽くして焼け跡闇市の世界の復活を夢想したのかもしれない。この芝居が上演された時でも十分に時代がかった焼け跡の戦後のイメージだったはずだ。

あれから50年経ち、オープニングの(あの時の出演者である)鷹さんと山丸りなさんとの出会いから始まり、ラストの別れに終わる円環的仕掛けは「腰巻お仙」の郷愁的再演ではなく、新しい読み替えによる演劇の出発への決意にも見える。

確かに振り落とされた白幕の後ろに現れる目眩く唐世界は驚驚しいアングラ的装いだ。けれども、無垢なる少女「仙子」が娼婦となって舞い戻り、彼女を救えなかった幼馴染みの芳一が自衛隊員となって舞い戻っても、日本帝国復活を願うドクター袋小路に絡めとられるという芝居の筋の辻褄をいちいち追っていっても追い付かないほどの唐ワールド全開のイメージの奔流に身を任せて、台詞の強さに圧倒されながら観ていると、この時代の物語として見え始めてくる。


娼婦となり堕胎児達を引き連れ、最後に裏切られようと、彼女の「肉体」の絶対的肯定によって「右」も「左」もなく「感傷的ヒューマニズム」も、まさに「へたれインテリの泣き言」も凌駕する少女の「無垢」の力が再生を作ってゆくと誤読して、劇場を後にした。


役者スタッフ一丸となって自分達の今の物語にすることに勝利した舞台だった。


画像に含まれている可能性があるもの:1人以上
2018-12-16 12:03 この記事だけ表示   |  コメント 0

*唐十郎作 小林七緒演出 スズキ拓朗振付 公式サイトはこちら Space早稲田 16日まで
 文化庁委託事業「平成30年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」日本の演劇人を育てるプロジェクト 新進演劇人育成公演 俳優部門…という長い前書きがあり、流山児祥がプロデューサーをつとめる。

 公演の主催、概要が具体的にどういうことを指すのか、携わる俳優やスタッフにとってどのような意義を持つのかは実はよくわからないのだが、文字通りと受けとめた。1969年、機動隊が紅テント周囲を包囲する中、新宿中央公園で決行された、状況劇場初期の伝説の物語。俳優は、育成対象とされた数人の若手に、中堅やベテランまで、流山児事務所、柿喰う客、Studio Life、劇団わらく、サスペンデッズなどさまざまな劇団から参加しており、さらに大久保鷹までが揃うという大変な座組である。故障して送風しか出ない空調と、ほぼ満席の盛況ゆえ、劇場の温度、濃度は芝居の後半からしだいに高くなり、身体的に辛かったことは確かだ。終演後、暑さや疲れ、空気の悪さに「やれやれ」といった雰囲気もあった。しかしそれが吹き飛ぶほどの手ごたえ、高揚感に満たされる一夜となった。

 唐作品には劇中にしばしば歌う場面がある。歌いづらいメロディであり、といってミュージカルのように歌い上げるものでもなく、俳優にとってはひとつのハードルであるだろう。台詞にしても、呼吸とのバランス、リズム、息継ぎなど容易くはない。それでも「この芝居をやりたい」というエネルギーがすべての俳優から強く発せられており、客席にも「この舞台を見たい」という熱気が漲る。唐十郎作品の持つ力は演じ手、受け手双方に半端ではない熱量をもたらすのである。

 例によって物語の構造は簡単に理解できるものではなく、場面転換や人物の出入りも目まぐるしい。舞台に身を委ねることで精一杯の観劇であった。1969年の初演との比較ができないのに心に沸き起こる懐かしさ、同時にノスタルジー満載の物語設定にも関わらず、そこからにじみ出て、しばしば客席に襲いかかるような新鮮な毒気は何なのだろうか。今回が初めての方、これまで別の公演で何度か拝見した方と、俳優との出会いもさまざまだが、いずれも「こんな演技をする俳優さんなのか」という驚きや、唐十郎の劇世界に数十年間棲みついているかのような大久保鷹を相手に、一歩も引かない堂々たる演技を見せる若手を見ると、次の出演作がいちだんと楽しみになるのである。

2018-12-12 13:38 この記事だけ表示   |  コメント 1
様々なる「劇評」です。
BY才目謙二さん

2018-12-7 『腰巻お仙 振袖火事の巻』@Space早稲田 観劇。

50年前、事件となり伝説となった状況劇場『腰巻お仙 振袖火事の巻』(1969年1月公演)。

その初演舞台に立った大久保鷹さんは、本作のアフタートークで満員の観客に向かって熱く言い放った。

---今日この作品をご覧になってわかったでしょう。これは『今』のことなんだってことが!

そしてもう一つ重要なことも。

---唐さんの戯曲は訳が分からないと言われる。けど、演ってみるとわかるんだ。どんな些細な台詞でも一本ピーンと筋が通っていることが。貫通しているんだよ!

本作の貫通行動は「今」を映し、「今」をも貫く。

劇中、エノケンこと榎本健一の『これが自由というものか』(1954年、作詞作曲:三木鶏郎)が何度も歌われる。

戦後10年の世相を映したこの「冗談ソング」は

♪知らない間にモルモット、知らない間に水爆病、
知らない間に値上げして、知らないにMSA(相互安全保障法)、知らない間に機密法、
知らない間に税金で、知らない間に自衛隊。
これは呆れた驚いた、何がなんだか分からない、これが自由というものか♪

と、呆れ驚くほど現在の世相を反映している歌だ。

あるいは、日露戦争へ征った弟を詠んだ与謝野晶子『君死にたまふことなかれ』の歌唱は、戦争準備、海外派兵へと突き進む現政権の暴走を嘆じているかのようだった。

世相を映す本作は、一方で唐十郎が「特権的肉体論」を確立した時期の『腰巻お仙』シリーズを集大成する作品である。

初期の別役実に影響を受けた不条理劇的作風と、1970年代に入って『唐版 風の又三郎』でひとつの頂点を極める唐ワールドのほぼ中間に位置する劇作といえるだろう。

そこには特権的肉体への当て書とも思える「強烈な遊び心」と唐十郎独自のキャラクターや表象の「原型」が「過剰に」ひしめいている。

たとえば、

汽車の中で子供を堕ろし、仙台から上京した仙子。

その堕胎児は三つの分身となり「探偵・明智小五郎です」と名乗り仙子に迫る。「探偵・明智」は後の唐アイテム「帝国探偵社(テイタン)」を連想させる。テイタンは唐ワールドでは「地獄・冥府」の象徴であった。

戦うことを拒み、武士の身分を捨てて平和を求めた「笛吹童子」。

仙子の幼馴染である円谷芳一は、その名の通り「耳なし芳一」であり、1964年の東京オリンピック、マラソンの勇者・円谷幸吉である。

弟を死なせたオカマ。

そして、謎の塾講師は特攻隊の生き残りにして悪徳医師であった。

芳一の父も戦艦大和の生き残りで、この世の法則と逆の世界に住み、エノケンの冗談ソングを歌い続ける。

悪徳医師を♪ローレンローレンと鞭打つドSな看護婦たち。。

こうしたバラバラに見えるキャラや表象が「演劇」という装置の上で出会い、どんな動きをして、当時の世相を、今日の世界を貫通していくのか。

「あらすじ」を追うとつかみにくいことは確かだが、ひとたび劇的想像力が喚起されれば、痛快至極の「過剰で過激な芝居」が展開されていく。

怪優による怪演もある。ドタバタ・ナンセンスもある。

小林七緒演出は、それらを歌や音楽でうまく料理した。

唐戯曲の過剰さ・分かりにくさを減らす方向で演出を加えながら、巧みな舞台構成とキビキビした俳優の動きで壮絶な唐ワールドに我々を親しみやすく引き込んでくれる。

テント芝居のように舞台の奥は開かないが、ラストには劇が現実の新宿の街と地続きとなった。

公演は12月16日まで、Space早稲田にて。

自動代替テキストはありません。

2018-12-12 13:36 この記事だけ表示   |  コメント 0

いつもの様に、今村修(演劇評論家)の演劇と時代を読む「劇評」です。ありがとうございます。↓

日本の演劇人を育てるプロジェクト新進演劇人育成公演「腰巻お仙 振袖火事の巻」(作=唐十郎、演出=小林七緒)@Space早稲田

初演は1968年1月。新宿西口の新宿中央公園で上演許可が下りないまま、機動隊200人が紅テントを取り囲む中、上演を強行したという伝説の作品。リヤカーに道具を積んだ唐たちが厳戒の都庁職員や警察を引き付ける間に、トラックで乗り込んだ別働隊が瞬く間にテントを建ててしまったというから凄まじい。上演中止を命じる警察のスピーカーの怒号の中で上演を完遂、唐ら3人は逮捕された。それから半世紀、お仙の奏でる笛吹童子の笛の音が、早稲田の地下空間に蘇った。

幼馴染の片桐仙(山丸りな)に思いを寄せる少年・円谷芳一(祁答院雄貴)は、怪しいソロバン塾の先生(伊藤俊彦)から彼女を守れず、自衛隊に志願する。1年後に戻ってきた新宿の町で仙は、ポン引き(眞藤ヒロシ)と組んで客を引いていた。明智小五郎と名乗る堕胎児たち(成田浬、勝俣美秋、佐野陽一)の母と名乗る仙は、いつしかドクター袋小路の精神病院に。一旦は病室を抜け出し芳一に助けを求めるが、袋小路の奸計によって阻まれてしまう。

と、むりくり筋立てを書き連ねてみても、この劇の世界はほとんど伝わらない。唐の初期戯曲にお馴染みの床屋(中原和弘)と永遠の客(山下直哉)や、妖艶な毒花・西口おつた(江口翔平)、仙の育ての親の爺(大久保鷹)ら、いずれ劣らぬ百鬼夜行な人物たちも登場して、難解にしてナンセンス、猥雑にして神聖なドタバタ騒ぎが繰り広げられる。

1969年といえば、5年前に東京五輪があり、翌年には大阪万博を控え、世間は高度経済成長に浮かれ、一方で大学闘争や70年安保闘争で街が沸騰していた時代。戯曲にも随所にその名残が感じられる。お仙が引き連れる堕胎児たちは、経済発展の陰に押しやられ、踏みつけられ、忘れられてきた者たちの怨念なのかもしれない。3幕と4幕の間で演じられる幕前芝居は、紅テントを花園神社から追い出した新宿の街の「浄化運動」に対する痛烈な悪罵だろう。

まるで先の読めない破天荒な物語の進み行きは多様な妄想を掻き立てる。例えば「お仙」とは何者だったのか。初期の唐戯曲に特徴的な登場人物、ジョン・シルバーとお仙をそれぞれ男性原理、女性原理という人間内部の二つの力学の対立・拮抗・円環と読み解いたのは扇田昭彦氏(冬樹社「唐十郎全作品集 第一巻」改題など)だったが、その顰にならって更に妄想を膨らませれば、お仙は革命幻想に読み替えられないだろうか。当時の反体制運動はベトナム反戦などの平和運動に一つの淵源を持ち、男性原理の権化ともいえる社会の権威や秩序に立ち向かった。それを突き動かしたものは、共産主義理論である以上に情念であったようにも見える。だが、終盤堕胎児たちは反逆し、お仙に襲い掛かる。それは、自由、平等を標榜した運動の中に、いつしか権力闘争や支配といった男性原理的なものが忍び込み、母体である運動そのものを食いつぶして行った成り行きに符合する。だとすれば、運動がピークを迎えていた1969年にすでにその行く末を予見していたことになる。血みどろの惨劇で、多くが死に絶えた新宿の荒野に、お仙と芳一は一体何を見たのだろうか? と、妄想はこれくらいにして閑話休題。

演出の小林は、50年後の東京にこの作品を蘇らせるに当たって、初演を復元させる方向は選ばず、2018年の日本を投影する途を選んだようだ。開幕前から舞台幕に投影されている1960〜1970年代のニュース映像は、当時に観客を引き込むというよりも、その後に展開する劇との落差を際立たせる。劇中音楽も、歌詞はそのまま曲はすべて作り変えた(諏訪創)。ヒーロー・芳一は感情の起伏に乏しく、ヒロイン・お仙も溢れかえる情念や男を食い尽くすような剛さは持ち合わせていない。目くるめくような浪漫とカタルシスを期待すると肩透かしを食うかもしれない。かくも体温が低くなってしまった日本社会だが、五輪といい、万博といい時代は奇妙な相似形≠フ様相を呈してきた。いや、権力が理性を失っているだけ、より厄介な時代になっている。2018年の芳一は、この先どこに新たな戦場≠見出すのだろうか。

初演にも出演した大久保鷹が、已むに已まれず今回戯曲に付け加えた唯一の言葉「寒いよ」が、今の風景の荒涼を無惨なまでに言い当てていた。(敬称略)



2018-12-11 19:29 この記事だけ表示   |  コメント 0
流山児事務所「腰巻お仙・振袖火事の巻」

昨12月4日、Space早稲田で流山児事務所「腰巻お仙・振袖火事の巻」(作:唐十郎、演出:小林七緒)を観た。役者として声を掛けられた年には芝居の感想を書くのは控えているが(今年3月、唐十郎・作、金守珍・演出、新宿梁山泊「少女都市からの呼び声」に出演)、この作品は僕の人生に多大なる影響を与えたので、あえて記すことにした。
1969年(昭和44年)1月3日。当時大学受験で正月休みもなかった僕にとって、翌4日の朝日新聞朝刊を見て驚いた。記事の詳細は忘れたが、社会面に写真入りで大きく取り上げられ、「東京のアングラ劇団が機動隊と衝突!」という内容の記事。そこでアングラ劇団という言葉を初めて知ったが、それが唐十郎率いる状況劇場だった事は後に知る。

紅テントを包囲する300名の機動隊。午後7時半頃。

自衛隊の制服を着た円谷芳一(唐十郎)。午後8時。

ラストシーン。テントの袖が開き、現実の機動隊を借景に取り込む。



観客を返した後、テントから出る座員たちを警官が取り囲む。8時45分。

逮捕される唐十郎。その後ろに麿赤児と四谷シモン。

李礼仙(現・李麗仙)逮捕。

テントをたたむ。午後8時50分。

トラックにて去る。午後9時15分。
その前年の10月21日、国際反戦デーの火炎瓶闘争で新宿が火の海と化し、甲府から受験のために向かう新宿駅がいつ再び火の海になるか戦々恐々としていた矢先の出来事。しかも1月19日になると東大安田講堂が陥落し、東大をはじめとする国立大学の一部の入試が中止と発表され、受験校も限られる事となった。2月中旬に受験を終え、帰りしなに新宿文化で観た映画が大島渚の「新宿泥棒日記」。新宿紀伊国屋書店で本を万引きした青年(横尾忠則)が女店員(横山リエ)に追いかけられて逃げ込んだ先が、新宿花園神社で「由比正雪」の公演(68年3月〜5月)を打つ状況劇場の紅テント。そこで初めて機動隊と衝突したのが状況劇場だと知り、理系の人間には理解不能なアングラ劇なるものに興味を抱いた。その花園神社を追われる事となった状況劇場は「さらば花園!」と題し、「新宿みたけりゃ 今見ておきゃれ じきに新宿 原になる」という68年10月の新宿騒乱を予兆するかのような唐の捨て台詞を残し、向かった先が新宿西口公園でのゲリラ公演。 大学に入学したものの入学式粉砕を叫ぶ学生たちにより入学式もなく、しばらくして全学ストに突入して授業のない日々が続いた。入試や入学式を粉砕した学生たちには恨みを抱いていたので彼らとは一線を引き、映画や芝居、そして酒場に通う日々が続いた。そんな折、その年の10月に早稲田小劇場で「少女仮面」が上演され、白石加代子と吉行和子の演技もさることながら、唐十郎が早稲田小劇場のために書き下ろした戯曲に胸を射抜かれた。一刻も早く状況劇場の芝居を見たいと思っていたら、12月に渋谷の金王八幡宮で「少女都市」の公演があった。初日か2日目に初めて状況劇場の生の芝居を観たが、魑魅魍魎の役者たちに度肝を抜かれ、唐の詩的で猥雑で文学的な台詞の数々にまたしても魅了された。そして数日後の新聞を見ると、天井桟敷から送られた葬式用の花輪が気に入らないと、劇団員が天井桟敷を襲って大乱闘となり、唐十郎と寺山修司が留置所に収監される始末。以来、ゴールデン街で高下駄で竹刀を持った革ジャンスキンヘッドの用心棒(篠原勝之)を従えた唐十郎一派に会うたび、喧嘩を吹っかけられるのではないかと戦々恐々として酒を飲んでいた。そんな近寄りがたい連中であったが、芝居は別物。「吸血鬼」「少女仮面」「あれからのジョンシルバー」と立て続けに状況劇場の芝居を見続け、72年5月に上野の不忍池水上音楽堂で観た「二都物語」で完全に魂を奪われた。その衝撃は大学4年の僕にとって、卒業後の進路を決定する要因の一つとなった。論理的思考が及ばぬ非論理の世界。科学では推し量れぬ非科学の世界。日常から脱した非日常の世界。現実を飛び越えた非現実の世界。唐十郎と一族郎党が織りなす世界は、まさに百花楼蘭。応用数学の世界からコペルニクス的転回をして映像の世界に入った僕は、テレビドラマの演出助手を経てディレクターとなったが、一旦ドラマから離れ、TBS(CBC)の「素晴らしき仲間」というカルチャー番組で状況劇場の関係者たち(根津甚八・小林薫・四谷シモン・篠原勝之・嵐山光三郎・村松友覗)に出演してもらったり、芥川賞受賞作「佐川君からの手紙」の映画化を大島渚氏が断念したのでそれを引き継いで監督する予定だったが制作途中で中断したり、状況劇場から唐組となってからはNHKの芸術劇場で「ジャガーの眼」「電子城」「セルロイドの乳首」「透明人間」等の舞台収録をしたり、唐十郎との個人的付き合いも深まっていった。それ故、唐十郎と劇団状況劇場の名を知るきっかけとなったこの「腰巻お仙・振袖火事の巻」は、僕にとっては因縁深い作品である。
2016年10月、中野敦之率いる唐ゼミが新宿西口公園で公演したのに続き、この作品を観るのは2度目となるが、今回は50年前の初演の際にも出演していた伝説の怪優・大久保鷹、状況劇場晩年の作品「黄金バット」(1981)に出演していた中原和宏に加え、成田浬らの実力派メンバーが脇を固め、唐ゼミの公演にも増して俳優陣の健闘が光る。少女を演じる山丸りなも可憐な中に狂気を忍ばせ、これからが楽しみな女優の一人だ。


紗幕に投影された1960年代のニュース映像をバックに下手から大久保鷹が登場し、上手に佇む少女にこの作品が上演された1969年(昭和44年)1月3日の出来事を語る。幕が開くと、少女・片桐仙子(山丸りな/李礼仙)がソロバン塾の片隅でソロバンをはじいている。彼女は爺に拾われ育てられた中学3年生。彼女に恋心を抱く幼馴染の円谷芳一(祁答院雄貴/唐十郎)は、仙子から仙台に子供を残してきたと聞き愕然とする。仙子を拾った爺(大久保鷹/古知彬)は駄菓子屋を営むが中気を患って半身不随となり、仙子に面倒を見させている。床屋を営む芳一の父(中原和宏/大久保鷹)は、元戦艦大和の乗組員。そんな親子たちの周囲には怪しげな人物たちが集う。毎日床屋に通うポン引きの伊達男(眞藤ヒロシ/不破万作)。袋小路精神病院の医院長にして元戦艦大和の艦長でありソロバン塾の先生でもあるドクター袋小路(伊東俊彦/麿赤児)。精神病院の看護婦で円谷幸吉の遺書にしびれるアキ(原田理央/藤原マキ)。パンパンガールに扮して米兵を虜にし、反米をつらぬく看護婦のマキ(星美咲/富岡真紀子)。新宿西口で春を売り、亡くなったウドン好きの弟を偲ぶ西口おつた(江口翔平/四谷シモン)。母が吹く笛を探し求める、明智小五郎と名のる堕胎児たち(成田浬・勝俣美秋・佐野陽一/天竺五郎・田和耶)・・・。 自衛隊に志願した芳一は仙子との叶わぬ恋に破れ、世界のどこかで起きた戦争に出兵する事となる。(登場人物/の後は、初演時の出演者名)。暗示的な、この戯曲のラストを転写する。
花道の入口より、自衛隊の制服を着た芳一現れる。バックを手にしている。       芳一  さよなら、お仙。                             お仙  おまえの父さまは死んだぞ。                        芳一  知ってるよ、さよなら、お仙。                       お仙  そんなかっこうでどこへ行く。ヤクザ稼業は止めたのか?           芳一  戦争に行くんだよ。                            お仙  おお、戦さか、どこでやっとる?                      芳一  知らねえよ。でも戦争に行くんだ俺。                    お仙  死ぬなよ。                                芳一  わからねえよ俺。                             お仙  (急に芳一の腕を抱き込んで)帰ってこい。                 芳一  俺は人でなしだぜ。                            お仙  帰って来い。そしたら、この町にバラック建てて一緒に暮らそう。       芳一  どこで?                                 お仙  (テントの向こうの新宿を指して)あの、あの新宿で!!           二人、架空の焼野原をじっと見ている。                       お仙  (笛に口をあてる)                  ー幕ー
とあるが、冒頭同様、舞台から劇場の外へと立ち去る少女・お仙を見送る大久保鷹に映像が被さり暗転となる。
ラストの台詞は集団的自衛権を強行採決し、自衛隊を南スーダンに派遣して戦闘行為を容認し、憲法9条を改悪して戦争へと突き進む今と重なり、胸を締め付けられると同時に怒りが再燃し、安倍晋三を葬れない現状に苛立ちを覚えた。しかし 50年前に唐十郎が2018年の状況を予感していたとは、状況劇場という劇団名と共に、その先見性に改めて驚愕する。しかも1968年1月8日、マラソン選手で自衛隊員の円谷幸吉が「父上様母上様 三日とろろ美味しうございました。干し柿 もちも美味しうございました。敏雄兄姉上様 おすし美味しうございました。勝美兄姉上様 ブドウ酒 リンゴ美味しうございました。巌兄姉上様 しそめし 南ばんづけ美味しうございました。喜久造兄姉上様 ブドウ液 養命酒美味しうございました。又いつも洗濯ありがとうございました。(中略)父上様母上様 幸吉は、もうすっかり疲れ切ってしまって走れません。何卒 お許し下さい。気が休まる事なく御苦労、御心配をお掛け致し申し訳ありません。幸吉は父母上様の側で暮しとうございました。」と遺書を残して自殺した事件を戯曲に取り込み、国家が個人に課す計り知れぬ重圧を描いたことは、2020年の東京オリンピックの後にも同様な事件が起こるであろう事を予感させる。またこの作品の随所にその後の唐戯曲のモチーフとなるテーマが隠されているのも興味深い。 母と息子の近親相姦関係。少女と堕胎児。狂気の医者。戦争の爪痕。愛の床屋・・・。 老人たちの「何てじめじめした陽気だろう・・・」の台詞もこの戯曲から来ていたのか? そして唐が宴会の度に歌っていた「さすらいの唱」も、この芝居のための曲だった。        
「ある夕方のこと 風が俺らに伝えたさ   この町の果てで あの子が   死にかけていると   俺は走った 呼んでみたさ   だけど 俺を呼ぶ声はなかったさ   ある夜のこと 風が俺らに伝えたさ   この町の果てで 死んだ子がいると   俺は走った 呼んでみたさ   だけど 俺を待つ墓はなかったさ   それからある時 風が俺らに伝えたさ   この町の果てで あの子が俺を呼んでると   俺は走らぬ 言ってやったさ   それは 俺の声だと(それは 風のいたずらだと)」(作詞・唐十郎、作曲・小室等)。
「さすらいの唄」や四谷シモンの「けつねうどんの唄」も、曲調が変わったので違和感がある。テーマ曲を聞くとそのシーンが蘇る映画音楽と同じく、劇中歌の作詞作曲も脚本の 一部であると何故考えないのか?曲を変えるのなら、何故歌詞も変えないのか?ジョンシルバーの「よいこらさ」、少女仮面の「時はゆくゆく」、少女都市の「氷いちごの唄」、風の又三郎の「風の又三郎」など、唐の戯曲と劇中歌は切っても切れない関係にあるのに、小林七緒の演出が素晴らしかっただけに残念でならない。
余談だが、1969年1月3日の客席に流山児祥がいた事は驚きに値する。氏によると1968年の花園神社公演「由比正雪」の時に状況劇場の研究生となったが、当時まだ学生だった流山児は、唐から「芝居を取るか、デモを取るか」と問われ、青学全共闘の流山児はデモを取って劇団を首になったと聞く。それから40年経った2008年8月、流山児事務所創立25周年企画の第一弾が、本多劇場での因縁の「由比正雪」。初日乾杯の席で唐が流山児にプレゼントとして万年筆を渡すと、万感籠った流山児の目に涙が光っていた。流山児事務所は向う3年間、唐作品を上演し続けるそうだが、次回は「由比正雪」と聞く。2012年5月、唐十郎は転倒して脳挫傷を負い、以後、演出や新作を書くことができなくなった。タイトルとなる「腰巻お仙」の「仙」は、唐の片腕であり愛妻でもあった李礼仙から名付けたものであり、その李麗仙もまた唐組の久保井研らが起こした著作権裁判等の心痛で病に倒れ、再起が危ぶまれている。そんな中、流山児事務所や唐ゼミ、そして唐十郎の一番弟子である金守珍の新宿梁山泊が唐作品を上演し続けることは、唐や李にとっても大いに励みになり、我々唐ファンにとっても大いなる楽しみである。次回作が待ち遠しい。(文中敬称略。唐ゼミの感想の一部を加筆修正して、再度掲載)
流山児事務所「腰巻お仙・振袖火事の巻」。公演は16日(日)まで。          お勧めの一作です。
2018-12-10 15:31 この記事だけ表示   |  コメント 0

現代演劇の「原点」=唐十郎初期三部作3年連続企画の第一弾
『腰巻お仙〜振袖火事の巻〜』16日(日)まで絶賛上演中です。

とにかく観てください「演劇の自由さ」が、溢れています。
流山児★事務所のホープ、山丸りな、山下直哉、星美咲、森諒介の4人も爆走していますよ。ぜひ、ご贔屓に。

当日券、5枚以上あります。
ぜひ、早稲田までおいでください。

日本劇団協議会主催・新進演劇人育成公演
『腰巻お仙〜振袖火事の巻〜』 作:唐十郎、演出:小林七緒、プロデューサー:流山児祥

12月4(火)〜16(日)@space早稲田で上演中。

わたしは台湾から一時帰国、明日は台北に還ります。
『藝大版☆十二夜』21日(金)@藝大戯劇廰公演初日に向けて追い込み稽古です。こっちもメチャクチャ面白いです!

本日:10(月)終演後、中日打ち上げやります。
一緒に呑みましょう。

撮影:横田敦史

画像に含まれている可能性があるもの:1人、立ってる
画像に含まれている可能性があるもの:1人、立ってる
画像に含まれている可能性があるもの:1人以上、立ってる(複数の人)

2018-12-10 12:47 この記事だけ表示   |  コメント 0

『腰巻お仙』唐ワールドの「原点芝居」大好評のうちに12月16日(日)まで上演中です。

●ちなみに、わたしは1968年の2月・3月『由比正雪』花園神社公演の時、劇団状況劇場の研究生、20歳でした。春には青山学院大学の学生運動が激化し、青学全共闘副議長を務めていました。唐さんに「芝居をとるか、闘争をとるか?」と問われ闘争を取り研究生をやめました。1969年1月3日『腰巻お仙』西口公園強行上演の時は、8号館バリケード越冬闘争中でした。状況劇場の写真家で俳優でもあったIくんからバリケードに電話があって「防衛隊」として青学全共闘16人が西口公園へ行ったのです。小澤さんのFBの写真にも何人かが映っています。李さんと唐さんが公園条例違反で逮捕後、セットやテントを、麿さん、鷹さんたちみんなで阿佐ヶ谷の稽古場に運んだ鮮烈な記憶があります。その後も、西口の三光町パークという駐車場で『腰巻お仙』は2トントラックの上で上演され、その後、沖縄まで紅テント南下興行を敢行するのだが、この時期に、状況劇場研究生になったのが18歳の悪源太義平です。そして、1970年、私と悪源太、土方巽さんの元で修行していた北村魚たちと共に「演劇団」を設立する。わたしのアングラ演劇人生を決定した大事件が『腰巻お仙』新宿西口公園事件です。
これは、はるか50年昔の話です。

『腰巻お仙』全ステージ前売完売ですが、連日:当日券5枚近く、あります。ぜひ、早稲田までおいでください。

日本劇団協議会主催・新進演劇人育成公演
『腰巻お仙〜振袖火事の巻〜』 作:唐十郎、演出:小林七緒、プロデューサー:流山児祥

12月4(火)〜16(日)@space早稲田で上演中。
12月 9(日)台湾から一時帰国、早稲田で会いましょう。
10(月)中日打ち上げやります。一緒に呑みましょう。

撮影:横田敦史

画像に含まれている可能性があるもの:2人、靴
画像に含まれている可能性があるもの:1人以上、オンステージ(複数の人)、靴
画像に含まれている可能性があるもの:1人以上、立ってる(複数の人)、室内

2018-12-09 10:23 この記事だけ表示   |  コメント 0

『腰巻お仙』本日14時、3日目。唐ワールドの「原点演劇」大好評です。

前売完売!当日券3〜5枚あります。

日本劇団協議会主催・新進演劇人育成公演
『腰巻お仙〜振袖火事の巻〜』 作:唐十郎、演出:小林七緒、プロデューサー:流山児祥

12月4(火)〜16(日)@space早稲田で上演中。
12月 8(土)台湾から一時帰国します、早稲田で会いましょう。
10(月)中日打ち上げやります。一緒に呑みましょう。

画像に含まれている可能性があるもの:1人、オンステージ、演奏、立ってる



2018-12-06 12:46 この記事だけ表示   |  コメント 0

お待たせしました、本日4日(火)19時『腰巻お仙』初日の幕が開きます。唐ワールドに役者スタッフ一同全身でぶつかります。

山丸りなと共に、もうひとりの「新星」祁答院雄貴:鮮烈の早稲田デビューです。ぜひ、その目で見届けてください。お待ちしています。

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日本劇団協議会主催:新進演劇人育成公演
『腰巻お仙〜振袖火事の巻〜』
作:唐十郎、演出:小林七緒、プロデューサー・流山児祥
12月4(火)〜16(日)@space早稲田で上演中
(東西線早稲田駅1番出口右へ1分、中華『北京』B!)
音楽:諏訪創 振付:スズキ拓朗 
美術・舞台監督:小林岳郎 照明:横原由裕 
音響:高塩顕 衣裳:竹内陽子 映像:浜嶋将弘 撮影:横田敦史
アシスタントプロデューサー:米山恭子

【出演】:祁答院雄貴・山丸りな・山下直哉・江口翔平・原田理央・星美咲/伊藤俊彦・成田浬・眞藤ヒロシ・勝俣美秋・佐野陽一・森諒介・中原和宏/大久保鷹

☆全14ステージ「前売完売」です。
☆13(木)昼のみ残券2枚あります。お急ぎください!
☆当日券・キャンセル待ちは開演1時間前より発売します
諦めずにおいでください


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画像に含まれている可能性があるもの:1人、オンステージ、演奏、立ってる
画像に含まれている可能性があるもの:4人、、原田 理央さん、星 美咲さん、江口翔平さんなど、立ってる(複数の人)
画像に含まれている可能性があるもの:成田 カイリさん、勝俣 美秋さん、佐野 陽一さん、ダンス(複数の人)

2018-12-04 00:30 この記事だけ表示   |  コメント 0