恵比寿・シアターアルファ東京でシアターRAKU創立25周年記念公演
「RAKU歌舞伎☆から騒ぎ」
(原作=w・シェイクスピア、訳=松岡和子、演出=流山児祥、振付=北村真実、作曲=多良間通朗)
1997年に45歳以上の素人シニアを対象に始まった楽塾も25年。
シアターRAKUになり、そのまま続けている人がほとんどで、
70歳にスライドするのに流山児さんによれば、50代の人も入ったので今は平均年齢68歳だという。
今回の作品は「から騒ぎ」を日本の戦国時代に置き換えたもの。
戦から凱旋した領主・頼国(後藤英樹)が、飯奈家で蓮左衛門(二階堂まり)のもてなしを受ける。
家来の猛将、九郎次郎(桐原三枝)は飯奈家の娘、村雨(原きよ=声もいいね)にひと目ぼれ。
友人の弁三郎(杉山智子)に打ち明けるが、大の女の子嫌いの彼は猛反対。
弁三郎の目に止まったのは村雨の従妹、松風(川本かず子)。
だが、松風も大の男嫌い。
若者たちの恋路を手助けしようと、頼国が一肌脱ぐことになるが、
頼国の異母弟で、腹黒い高国(村田泉=上手い!)の策謀も絡み、恋の行方に暗雲が立ち込め……。
恋と陰謀の騒乱劇。
RAKUの役者たちは主婦であったりそれぞれ仕事をもっていたりする。
そして年に一度の公演。
舞台を見ながら、アマチュアとプロの区分けはどこでつけるのかと考えた。
いわゆる新劇系劇団所属の俳優たちにしてもほとんどはアルバイトで生活している。
俳優養成所での訓練がプロの修行のひとつのステップだとしても、RAKUの役者だって25年も修行してきている。
演技にしても、舞台に立った時の「存在感」にしても遜色ない。
違うのは年に一度の公演だけということ。
今日改めてRAKUの舞台で感じたのは、役者たちが芝居を楽しんでやっていることがビンビン伝わってくること。
そして皆さん実に魅力的だ。
たとえばベテランの名優たちが1週間で作った舞台は技術も集中力もあるだろうからそれなりに完成度は高いだろう。
しかし、「拙い」芝居でも1年かけて作ったものの物理学的な「質量」は比較にならないいほど大きい。
舞台の密度は稽古の量に比例する。稽古量の積み重ねで生まれる絶対的「質量」は舞台を厚くする。
その意味で、RAKUの舞台の厚さと熱さは稽古量の多さに負うのだ。
多少、素人っぽさがあっても、それを上回る板の上の役者の存在感がある。
成熟することで失われていくものが、ぎりぎりのラインで残っている。それがいい。
北村真実振付の圧倒的なダンス、そして歌唱。心から楽しむことができた。
25年続けてきた流山児さんの演劇愛が実った舞台だった。
楽塾を欠かさず見てきた故・江森盛夫さんに見せかったな。
出演はほかに、出田君江(夜回り・伸助)、高野あっこ(使者・五平)、辻洋子(神主)、内藤美津枝(鰡之介)、永田たみ子(番七)、西川みち子(小平次)、溝田勉(弟・安右衛門)。以上シアターRAKU。
伊藤裕作(客演、夜回り・音助)、春はるか(文書係・伴次郎=流山児★事務所)、本間隆斗(侍女=流山児★事務所)。
西川さんは私の住んでいる市のタクシー運転手さんで、憲法朗読会でお世話になった。伊藤裕作さんは舞台で寺山修司の短歌を詠んだ。役者も板についてきた。一言発して笑いを取れる役者はそうそういない。 1時間40分。7月3日まで。